旧暦の8月1日は「八朔(はっさく)」と呼ばれ、元々は豊作を祈願する大切な日とされてきました。田実の節(タノミノセチ)とも呼ばれています。
この田実(タノミ)を頼みとかけて、日ごろお世話になっている(頼みあっている)方々と結びつきを深めるために贈り物をする日となっていきました。
地方ごとに八朔の風習があり、壱岐においても八朔用の紙雛(「八朔雛」といいます)を作って、贈る風習がありました。この八朔雛を「ヒメゴジョサマ」と呼び、女の子の健やかな成長を願って、お世話になっている方々に贈っていました。
壱岐の郷ノ浦地区の八朔では、大正時代まで「タノモ」と呼ばれる風習があり、「ヒメゴジョサマ」に加えて、オキヌという着せ替え用の紙雛と金銀の水引をかけた一対の茶袋を一緒に台紙に貼り、オシロイバナを添えて贈り物としていました。雛を贈られた家では、「ヒメゴジョサマ」を家の梁に貼り、オシロイバナは神棚にお供えしました。
オシロイバナが添えられているのは、「美しい娘に育つように」という願いが込められています。
また、壱岐ではお茶には薬効があるとされ、永遠と植え続けられるものとされており、この風習にちなんで「良い縁が末永く続くように」という願いを込めて茶袋が添えられています。
ヒメゴジョサマについては、壱岐郷ノ浦町の八朔雛伝承者である「(故)平田増枝」様からはじめて教えていただきました。
ヒメゴジョサマの調査において、日本折紙協会とその会員の皆様に多大なるご協力をいただきました。
平田様をはじめ、お世話になった方々に心より御礼申し上げます。